無償型 SO と有償型 SO 徹底比較!どちらのメリットが大きい??

2023年1月13日

こんにちは、てんこです。

今日はスタートアップに転職する際、よく提示される SO についてもう少し詳しくお話ししていきたいと思います。

とにかくSOって何?提示されたSOって良い条件なの?悪い条件なの?をざっくり理解したい方にはこちらの記事で解説しているのでぜひ参考にしてみてくださいね。

この記事の対象者
  • 有償型SOと無償型SOの違いを知りたい
  • 提示されたSOの条件が良いのか悪いのか判断する基準を知りたい
  • SOを行使する時の自己負担額について知りたい

転職先から有償型 SO を提示された!

さて、念願の内定を勝ち取り、転職先候補のスタートアップからもらったオファー条件を精査するステップまできました。そこでみたSOについての記載。

有償型ストックオプション(ドーン!!)

え、まって。有償型って修飾語がつくってことは、逆説的には無償型があるってこと?
報酬条件の提示なのにこっちがお金払うの?え、わかんない。。。わかんない!!!

てんこ

はい落ち着いて〜。

大丈夫です。

結論から言いますと、この後出てくる払込額というものがそれほど大きくならない場合は、有償型SOの方が無償型SOに比べて多くのメリットがあると言えます。

SOにはいくつか種類があり、細分化していくと無償型SOの中でも税制適格か税制非適格かに分かれていったりするので、今回は無償型と有償型の違いに焦点を当て、有償型SOのメリットについて見ていきたいと思います。

有償型 SO と無償型 SO

有償型SOとはその名の通りSO付与時に被付与者が会社にお金を払ってSOを購入することで付与されるものになります。この時会社に払うお金の金額を払込額と言います。

一方、無償型SOはこの払込額が発生しません。名前の通り無償なので、SO付与時は無償で被付与者にSOが与えられます。
なので、無償型SOの場合は被付与者は払込原資を準備する必要がないことになります。

これだけ見ると、なんだか無償型SOの方が魅力的に見えますね。

事実、日本のスタートアップで採用されているSOのシステムとしては後者の無償型SOが最も一般的で、従業員に対するインセンティブ設計の一つとして導入されています。

しかし昨今、前者の有償型SOを従業員に対するインセンティブ設計の一つとして採用するシステムが見直され始めており、こちらを採用する企業も増えてきました。

これには企業会計費用計上の要・不要が関係しています。
これまで、有償型SOは企業会計において費用計上は必要がないとされてきましたが、2018年4月以降は無償型SO同様、有償型SOも費用計上が必要ということになり、企業側はどちらのSOを選んだとしても費用計上が必要という決まりになっています。

しかし、未上場企業に対してはこの限りではなく、有償型SOの費用計上は強制されないとされているため、未上場の企業、つまりスタートアップでは企業側にも無償型SOを付与するより会計処理上のメリットがあると捉えられるようになりました。

では従業員側から見た有償型SOのメリットとはなんでしょうか?
次の項で見ていきたいと思います。

有償型 SO のお金の流れ

有償型SOで発生するお金の流れを見ていきます。
発生するやり取りのタイミングは以下の3回です。

  1. SO発行(付与)時
  2. SO権利行使時
  3. 株式譲渡時

一つずつ見ていきます。

SO 発行時

会社からSOを発行されて、それを購入するため「SO1株あたりの発行価格✖️SO」を会社に払います。これが払込額となります。
この時従業員は、SOの権利を取得したことになります。株式を取得した状態ではないので違いにご注意ください。

この発行価格、基本的に時価で発行されるのですが、必ずしも株価と同じではありません

この発行価額は、まずSOの公正価値が算定され、その後条件付けによる払込価格の引き下げを行うことで決定されます。

SOの構成価値の算定とは、簡単にいうといくつかの予測モデルを使って将来の株価を予測することを指しますが、詳細な説明は割愛するとして、この予測を行うことでSOの構成価値は株価の大体40~60%になります。

さらにここから、業績達成条件(売上・営業利益)などの行使を制限する条件付けを行うことで、発行価格をさらに引き下げることができます。

なぜこのようなことができるかというと、上記の条件付けにより、将来において失効するリスクが生まれることから、金融商品としてのSOの価値は下がることとなり、結果として発行価格が少なくなるという考え方が適用さっれるためです。

従って、このSO付与時に払込むお金は、行使時払うものとは異なり、大体が株価よりも安い価格を支払うことで取得できることになります。

私の経験した企業では、入社してしばらくしてから条件の書かれた契約書が準備され、サインした翌月の給料から払込額が天引きされる形でSOの権利を取得しました。
発行価格自体はかなり引き下げられていて、数万円ぐらいで済んだのであまり自己負担が大きすぎて困ったということはなかったです。

ちなみに、この時払った払込額は、たとえ会社を退職したり、SOの権利を行使しなかったとしても基本的には返金はされません。厳密には各会社から提示された契約書によりますが、大体は「返金しないからね」、といったことが書かれていると思います。

次項以降で触れますが、有償型SOは税制上金融商品として扱われるため、基本的には投資と同じです。
そのため、この時払った払込額は権利を行使して株式譲渡し利益が出ない限りは取り戻せないお金だと思ってください。

本項で触れた予測モデルについて詳細を知りたい方は、こちらのサイトが簡単にまとまっていてわかりやすかったので参考にしてみてください。

SO 行使時

続いて、SOを行使する際にはSO行使価格を支払います。
そもそも、SOを行使する、とはどういう状態を意味するのでしょうか?

SOを行使する」とは、「行使価格を支払って株式を取得する」ということを意味しています。

基本的に、行使価格はSO発行(付与)時に決まっています。
内定先からオファーをもらい、SOについての契約書も提示された場合には払込額一株あたりの行使価格SO付与数行使期間については必ず明記されているので確認しましょう。
行使価格の総額は、「一株あたりの行使価格✖️SO付与数」で計算されます。

この行使価格はもちろん、発行価格よりは高いので、SO行使時にはまとまった原資を手元に準備しておく必要があります。
単純に計算して行使価格100円1万個のSOを行使できる権利を持っている場合には全SOを行使する場合100万円必要になってきます。

株式譲渡(売却)時

最後に、株式譲渡時に発生するお金のやり取りです。
これがいわゆる、従業員側の利益(キャピタルゲイン)になります。

基本的に株式譲渡は、「株価>行使価格」のタイミングで行います。
SOによってもたらされる利益は、SOを行使して取得した株式の現在の株価との差分から生まれるからです。

もし、株式譲渡しようとしているタイミングの株価が、行使価格よりも安い場合はマイナスとなってしまい利益は出ないため、時期を見送る必要がありますね。

例えば、以下のような条件の場合、差分利益は800万円となります。

行使価格株価株式数
200円1,000円10,000個
計算式:(1,000-200)✖️ 10,000 = 8,000,000

厳密にいうと、行使前の付与時に払込額が発生しているのでSOのトータルの利益をより詳細に計算すると上記と異なってきますが、今回は計算を簡単にするために割愛しました。

注意すべきは、この差分利益には税金がかかるということです。

有償型SOは、税務上「金融商品」としてみなされるため、累進課税が適用される給与所得課税(最大約55%!!)ではなく、譲渡課税(最大約20%)が適用されます。

ちなみに、税制非適格の無償型SOは給与所得としてみなされるため、適用される課税は給与所得課税となります。

てんこ

やばい、利益額によっては最大半分以上税金で持っていかれる!!

みなさんお気づきでしょうか?

そう、この有償型SOか無償型SOって、そのSOが税務上「金融商品」とみなされるか、「給与所得」とみなされるかによって税金が大きく変わってくるんですね。

税金の話が出たので無償型SOにおける税制適格無償型SOについても触れておきたいと思いますが、無償型SOでもそれが税制適格であれば、有償型SOと同様、譲渡益課税が適用されます。つまり最大20%の方ですね。

じゃあ税制適格無償型SOが最強じゃん、払込額もないんでしょ。

と思ったそこのあなた。

わかる、わかるんだけど!世の中そんなに甘くないんですよ!!
美味しい話には裏があるんですよ!!!

税制適格無償型SOと有償型SOを比較した時に、てんこが有償型SOの方がメリットがあると考える理由について触れていきたいと思います。

有償型 SO のメリット

有償型SOには、行使価格の制限がない

税制適格無償型SOには、年間権利行使が1200万円未満という行使価格制限がついています。
そもそも、SOを従業員にインセンティブとして提示するケースはIPO(株式市場上場)を目指しているケースがほとんどだと思いますが、もし無事に会社が成長して晴れて上場!となった際、この制限が障害となりえます。

一度でも行使価格制限から外れてしまった場合には、課税は譲渡益課税から給与所得課税に切り替わってしまい、キャピタルゲインの最大55%の税金を支払わなければならないことになってしまいます。

その点、有償型SOは行使価格の制限がないため、どんなに大きなキャピタルゲインになったとしても譲渡益課税(最大約20%)が適用されます。有償型SO、夢あるね!

付与対象者及び譲渡の制限がない

税制適格無償型SOは、人的要件が課されていて付与対象者の制限がかかります。
発行会社・その子会社の取締役・執行役・従業員と、一部の社外高度人材に限定されています。

さらに、譲渡も禁止されているため本人しか行使できません。

これは税制適格に適用している、していないに関わらないため余談なのですが、この人的要件について、大体の会社が権利行使時にその会社の従業員であることを課しているケースが非常に多いです。

これはどういうことかというと、入社してしばらくその会社で頑張り、数年後に別の会社に行くことになった時、会社がまだ上場してなかったりなどで付与されたSOを行使できない状態の場合、退職するときにそのSOの権利を放棄することになります。

従業員縛りや従業員ロックアップと言ったりしますが、この条文のため、てんこは過去3回もSOを放棄し白紙に戻してきました。

有償型SOだからといって、この従業員縛りが絶対にないというわけではないですが、提示されたオファーのSO契約書をしっかり読んで、行使条件について確認しておきましょう。

上記は行使時のお話ですが、いずれにせよ、付与時に関して言えば有償型SOには税制適格無償型SOのような付与対象者や譲渡の制限に決まりはありません。
なので、実は社外の人にも付与することができます。

いかがでしたか?
受け取る側から見たSOについての情報はなかなかないと思うので、少しでも参考になりましたら幸いです!